- 「医師の将来性はないのではないか?」
- 「医師になっても安定した給料をもらえないのではないか?」
- 「医師数が過剰となって、クビになる未来が来るのではないか?」
- 「開業医が潰れていくことが増えていくのではないか?」
悩める医師の卵、もしくはヒヨコ、強いてはニワトリの諸君、ごきげんよう。
様々なニュース、情報に触れる中で、「あれ、医師って今後も安泰なのか???」と悩んだり、不安を感じてはいないだろうか?
気持ちはよく分かる。
少子高齢化社会となっていき、医療費は増大していくし、なんかよくは分からんけどAIは発展していくらしいし。。。
だが、安心して欲しい。まずこれだけは言いたい。
「まだ焦るような時間じゃない」
小生は、医師から経営コンサルタントとして外資系企業勤めをした経験を有している。
よって経済学にも精通しているので、医療業界を取り巻くマクロ環境なども含めて、論理的に「医師の将来」について解説していこうと思う。
さぁ、それではドンドコ解説していく
この記事を執筆したのは以下のメンバー
【略歴】
地方国立医学部卒→研修医→後期研修→外資戦略コンサルティングファーム→起業
地方⇆東京の両方を経験、かつ医師⇆サラリーマンの両方を経験
医師向けにキャリアやビジネスに関するお役立ち情報を月に代わってお届けする
結論
色々と述べたいところではあるが、諸君等はまず結論から聞きたいであろう。ゆえに、救急の現場でも鉄則である秘儀「結論ファースト!」
医師に将来性はないのか?
【結論】医師には将来性がある
医師にはありあま~る♪将来性がありあまる~♪少し贅沢を言い過ぎたみたいだ~♪
と私の中のゲスの極み●女が歌っている。
この結論となる前提として、「将来性」を以下のように定義した上で検討した。(逆に言えば、この定義が変われば回答は変化し得る)
「なぜこのような結論に私が至ったのか」について、医師の現状を整理し、医師を取り巻く環境の変化、医師以外の職業と比較していくことで、説明させていただこう
医師の現状
医師の現状を整理する上では、まず医師というものを分類していく。
というのは、そもそも「医師」というのが様々なタイプの医師を含んだ言葉なので、このまま「医師」の現状を整理すると誤った認識を生むことになるからである。
私の主観も含むので異論はあるかとは思うが、便宜上ざっくりとタイプを分類すると、以下のような形になる。
- 医局ルート常勤医
- 非医局ルート常勤医
- 美容外科・美容皮膚科ルート
- 開業医
- バイト医
上記見ていただくと分かると思うが、それぞれのタイプによって将来性は大きく異なるであろうことは想定できるのではないだろうか。
次に、現状として検討すべき項目として「お金」「時間」「やりがい」という3つを検討していく。
お金(給与)
まずはお金についてだが、研修医を除く医局ルート常勤医、非医局ルート常勤医における医師の給与レンジは、基本的には700万~1600万円程度となっている。
美容外科・美容皮膚科は2000万円以上。
開業医は経営状況にもよるが、基本的には年収として2000万円以上を得られることが多い。
バイト医は、どの程度勤務しているかによるので何とも言えないところではあるが、基本的に時間単価は1万円程度であり、年収としては1000万~2000万程度になることが多い。
時間
次に時間についてだが、これについては上記の分類以外に、さらに診療科、地域、病院の規模、職位という大きく4つの要因が絡んでくるので一概に言及することが難しい。
しかし、言及しないわけにはいかないので、全員に当てはまるわけではないことを念頭においていただいた上で、一定粗いながらも言及させていただこうと思う。
<医局・非医局ルート常勤医の場合>
私の経験上及び周りの医師を見ていると、平均的には平日8:30-19:00+当直2週に1回程度ではないだろうか。
もちろん、激しい診療科では7:00-23:00、休日も出勤、毎日オンコールなんてこともあるだろうが。。。
一方で、いわゆる緩い診療科、かつ病院の規模等によっては、9:00-17:00で休日出勤なし、当直なし、なんて所も当然存在する。
<美容外科・美容皮膚科ルートの場合>
基本的には、10:00-19:00の週休1~2日制、当直なしが基本となっている。
美容皮膚科医の働き方などの詳細については、以下の記事で解説している。
<開業医の場合>
院長の裁量になるので様々あるが、一般的には、9:00-19:00の週休1~2日制、当直なしが基本かと思う。
<バイト医>
定期非常勤であれば美容外科・美容皮膚科に近い。スポットアルバイトで生計を立てている場合は、1日あたりで言えば4時間~8時間勤務が多いだろう。
やりがい
最後にやりがいについて検討していく。
まずお金と時間については、客観的に評価しやすいが、やりがいは個人の主観に依存するところが多く、評価が難しい検討項目ではある。
そこで、サラリーマンも経験している私だからこそ感じたことも含めて、「やりがいとは何か」を最初に定義してみようと思う。
やりがいとは、次の5つの要因に規定されるように思う。
こちらの5つを「やりがいがあるかどうか」の評価基準としていきたい。
<①自分の裁量で意思決定ができる>
まず、全ての医師において、他の職種と比較した際には、圧倒的に①の「自分の裁量で意思決定ができる」は持っている。サラリーマンの場合であれば、チームとして動くことが大半であり、上司及び他チームの動向に大きく意思決定が左右されてしまう。一方で医師の場合は、基本的にはトップとして意思決定を実施することが可能である。
<個人から直接感謝をされる>
②の「個人から直接感謝をされる」という点について、これも平均で言えば、医師以上の職業は存在しないのではないか?というレベルで強い要素である。
<③労力に見合った、もしくはそれ以上のお金をもらえる>
③の「労力に見合った、もしくはそれ以上のお金をもらえる」という点については、医局ルート常勤医が不満を感じることが多い要素かと思う。逆に言えば、他のタイプであればこちらの要素は満たしていることが多いだろう。
<成長を実感できる(知的好奇心を満たせる、スキルアップができる)>
④の「成長を実感できる」という点については、バイト医、開業医、非医局ルート専門医の順で満たせないことが多いのではないかと考える。一概には言えないが、難しい知的生産活動や、複雑なプロセスが少なく、ルーチンワークとなりやすいのが要因である。
一方で、大学病院勤務であったり、外科医などはこの要素を満たしやすいと言って良いだろう。
<⑤仕事に見合った社会的地位を手に入れられる>
⑤の「仕事に見合った社会的地位を手に入れられる」については、サラリーマンも経験した私から言えば、医師以上に全員が社会的地位を手に入れられる職業はないと言いたい。
ここまで現状を簡単に整理してみたが、どのように感じるだろうか?
お金は、700万~1600万が平均レンジで、2000万overを目指すことも可能。時間は、かなり幅がある、つまり逆に言えば自分の選択次第。やりがいに関しても同様だが、私の経験から医師以上に多くの方がやりがいを感じることができる職業は少ないので、この要素も強い。。。
このように考えると、少なくとも私は、現状において他の職種と比較した際に、これ以上ない好待遇であると思っている。
起こっている or 今後起こる変化は何か?
医師の将来性を検討するに辺り、現状をここまで整理してきたが、次に現状起こっている変化及び今後起こるであろう変化をお伝えしていく。そのために、そもそも何が現状に影響を与えていく要因なのかを、まず整理していく。
現状に影響を与える要因としては、以下の4つが挙げられるかと思う。
- 働き方改革
- 医局制度・専門医制度と地域偏在
- 少子高齢化
- テクノロジー
ここで、将来性の時間軸を設定しておこうと思う。というのは、5年なのか10年なのか、はたまた30年なのかで、評価が大きく異なってくるからだ。
基本的には10年以上の時間軸で想定しようと思う。5年程度であれば、変化はあるだろうが、大きな変化は起きないように思うからだ。
それでは、それぞれの要因がどのような影響を与えていくかを検討していく。
①働き方改革
①働き方改革により、労働「時間」は減少していくだろう。短期的に業務量自体が減るわけではないので、時間当たりの負荷であったり、持ち帰っての業務等の課題は生まれるだろうが、単純な「時間」的な負荷は減少していく。
一方で、時間外労働が減少することによって「お金」という面でも減少していくことが想定される。
②医局制度・専門医制度及び地域偏在
次に、②医局制度・専門医制度及び地域偏在についてだが、医局制度については、大きな力であり、大胆な改革を想像するのは難しいが、一方で私の知る限り医局への不満を持つ医師は特に若い世代で増えており、この若い世代の動きが医局制度にどのような影響を与えていくのかは注目すべきかと考えている。
専門医制度については、皆さん周知の通り、メジャー科の人気が低下し、マイナー科の人数が増加していっている。その中で、どのような変化が起こるかを想像してみる。(※メジャーとは内科・外科全般。マイナーはその他の科)
例えば、アメリカであれば、診療科毎に給与に差があり、心臓血管外科等では平均年収が6,000万円だったりする。
韓国では、美容外科・皮膚科が最も人気であり、その次に精神科・・とマイナー科が続き、一番人気がないのが外科らしい。(個人的に韓国人医師から聞いた)そして人気の科に入るには、単純に成績が優秀である必要があるとのことだ。
日本でもこのまま診療科の偏りが進めば、アメリカや韓国のような動きが出てくるかもしれない。そうすると、「お金」「やりがい」といった部分へと影響が生じるのではなかろうか。
地域偏在についても同様で、都心部に人が集中し、「シーリング」といったものが行われたりしている。
③少子高齢化
次に③少子高齢化の影響を考えると、次のような因果関係を想像する人が多いのではなかろうか。
高齢者の人口↑ ⇒ 有病率↑ ⇒ 医療費↑ ⇒ 国の財政負担↑ ⇒ 医療費削減の方向に進む ⇒ 診療報酬の削減 ⇒ 医師の給料↓
一方で、〈売上〉=〈患者数〉×〈診療報酬〉となるので、〈診療報酬〉は減少するかもしれないが、高齢者が増えることで〈患者数〉は増えるわけなので、一概に上記の論理が成り立つとは言えない。
④テクノロジー
続いて④テクノロジーについてだが、次のような意見をよく聞くかと思う。
AIによって放射線読影医の仕事は代替されるよね
医師の仕事のほとんどはAIとかで代替されて、精神科とか機械に代替されない科が今後は有望だよね
テクノロジーで効率化されて医師の仕事は減っていく
誤ってはいないと思うが、これらは論理が飛躍し過ぎている。業務によっては完全代替が可能な領域があるかもしれないが、大半は医師の業務をサポートするような代替であると想定されるからだ。
例えば、消化器内視鏡などは良い例だろう。胃カメラによる診断プロセスにおいて、テクノロジーのサポートにより、消化器内科医の負担軽減となっている。それにより、切除等の外科的処置に時間を投下することが可能となっている。
テクノロジーによって「既存の」医師の業務は削減されていくと想定されるが、今後「新規の」医師の業務の出現などが予測される。
「新規の」業務というのは、まずは下記の図にあるプロセスを見ていただきたい。
上記のように「既存の」業務としては、診断・治療に重きが置かれているが、今後はウェアラブルデバイス等によりバイタルデータであったり、様々なデータが取得可能となってきており、データを活用した新たな医療技術などの出現が予測される。
その中で、「診断・治療」ではなく、その周辺である「予防」「予後」といった領域まで医師の業務が拡充していくのではないだろうかと考えている。
そのように考えてみると、テクノロジーにより業務「時間」が減り、その結果「お金」が減る、さらにテクノロジーに業務を代替され「やりがい」が減る、というような単純な話ではないことが分かるのではないだろうか。
以上、現状に影響を与える4つの要因を検討していったが、これら4つの要因それぞれがどのように作用するかによって「将来性はあるか?」という問いに対する回答は大きく変動する。ゆえに、正確に予測することは困難ではあるが、「お金」「時間」「やりがい」という項目でそれぞれまとめてみる。
医師以外の職業との比較
ここまでは、医師についてのみ言及してきたが、当メディアの運営メンバーは外資系企業出身者で構成されているので、医師以外の職業とも簡単に比較してみることで、将来性への検討としたい。
そもそも、国内という観点で捉えれば、仮に医師以外の職業の将来性がないとすれば、医師の将来性は相対的には高いと言えるからだ。
まずそもそも、将来性の要素に「お金」という項目が入っているので、「20~30代前半で年収1000万円を超えられる医師以外の職種は?」について解説しておく。
全てではないが、ざっくり挙げてみると、経営者、弁護士、パイロット、コンサル、投資銀行、7大商社、インセンティブ営業、などが主な職種となる。
いずれも入社の難易度が非常に高く、そもそも入社までに血のにじむような努力が必要となる。また入社してからも、涙で視界がかすむ日々を過ごしつつ、血のにじむような努力を継続する必要がある。
以下引用させていただいた画像にはなるが、素晴らしく分かりやすい図解なのでイメージを掴む参考にしていただきたい。ただし「20代~30代前半」に限定した図解ではないことに注意していただきたい。また勤務している皆さんは血尿が出ないように注意しよう。
こちら見ていただくと、例えばコンサル、投資銀行(外銀)などは「お金」は良いかもしれないが、「時間」は長いことが分かるだろう。「やりがい」に関しては、私の知る限りでは医師の皆さんの方が感じている割合が多かったように思う。
また余談ではあるが、「医師から他業種に転職する」ということも可能である。例えば、上述の「コンサル」「投資銀行」などに転職している事例も存在する。以下の記事でこの点についても解説しているので、興味がある方は参照していただきたい。
次に、テクノロジーによる代替という観点については、以下の記事を参考にしていただくと良いだろう。日系のIT・コンサルティング企業である野村総合研究所(NRI)がリサーチ結果を出してくれている。(ありがとう)
上記記事も参照していただくと良いが、これらの職種は含まれていない。(医師も)
医師と同様に、一部の業務は代替されていくが、根幹となる業務は代替されないだろう。
以上、ここまでの整理を統合して解釈すると、「医師の将来性はないのか?」という問いへと回答すると、
「医師の将来性は大いにあるッ!!!」
と言えるのではないかと思う。
今後の医師はどうすべきか?
これまでの分析を踏まえて、今後医師になる諸君、また医師達がどうしていくべきかに少しだけ言及しておく。
私の回答としては、非常にシンプルで、
「向上心を忘れず、能動的に学んでいけば良い」。
というのは、各診療科の医師として知識・技術を磨いていけば、先述した通り医師の業務はテクノロジーに完全代替されることはないので、代替不可能な人材となれるからだ。
経済的な市場競争原理で考えれば、代替不可能で需要>供給の状態であれば、給与は高水準に保たれるはずである。よって、知識・技術を持った医師はこの条件を満たす為、給与「お金」という面は担保される。さらに労働「時間」は減少、「やりがい」はむしろ代替不可能な仕事であり向上余地すらある。
一方で、知識・技術を向上させることを怠っていると、将来性は怪しいかもしれない。だが、これはどの業界でも同様の当たり前の話である。
よく不安を煽る手法として、「医師もこのままでは危ないので副業をしましょう」とか、色々と言及されているかもしれないが、私はそうは思わない。
診療技術を高めていく人の将来性は明るい。
ということで、医学部を目指している諸君、医学部在学中の諸君等は、是非安心して精進していただくと良いだろう。
また美容ポリクリでは、医師向けの自由診療への就職・転職相談・支援も実施している。興味がある方は、以下の記事も読んでみていただきたい。
まとめ
いかがだっただろうか?
医師の将来性は「ある」という回答に驚いた方もいるかもしれない。この問いは定義が変われば、大きく回答が変化する問いであるので(例えば時間軸を変える)、全員の回答が一致することは当然ない。
ただ私のスタンスとしては、将来性は大いに「ある」というスタンスだ。
その上で、このメディアの賢い読者の諸君に勧めたいのは、「自分の頭で考える」習慣を作るということである。
医師の将来はないらしいよ!
と誰かが言った際に、そのまま「へぇ~そうなんだ」と鵜呑みのするのではなく、「なぜそうなるのか?」「本当にそうか?」と考えることが重要である。
この自分の頭で考える習慣というのは、今後将来性のある医師となっていく上で、医師全体の将来性がどうなろうと「個人」として重要な習慣となる。
医師兼会社経営
地方国立医学部⇒初期研修⇒後期研修⇒外資系戦略コンサルティングファーム勤務⇒起業
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