【コラム】美容整形は女性を幸せにするのか?~美容医師向けオススメ本『モンスター』(百田 尚樹)~

美容整形は女性を幸せにするのか? コラム

突然ですが、あなたは「美人」でしょうか?それとも「ブサイク」でしょうか?

失礼だって?

そうですよね、非常に失礼だと思います。

でもあなたは人に出会った時に意識的、いや無意識的に「美人」か「ブサイク」か判断していないでしょうか?

この問いに対して、「絶対にしていないよ」と自信をもって言える人はほとんどいないのではないでしょうか?

かくいう私もそうだと思います。

人間の美しい顔に対する目というのは、4歳頃には完成されてくるそうです。つまり、私たちは4歳の頃から「美しい顔」「そうでない顔」というのを何度も判断を繰り返してきているということになります。

今回の記事では、美容整形にまつわる書籍「モンスター」(百田尚樹さん)を題材に、「美容整形は女性を幸せにするのか?」というテーマでお話ししようと思います。

※一部ネタバレ(文章の一部引用)を含みますので、読んでいない方はご注意ください。直接的な内容のネタバレはしておりません

作品紹介

2010年に出された小説になります。

作者は百田尚樹さん。「永遠のゼロ」「ボックス」等で有名な売れっ子作家さんです。

作品内容を端的に表すと「美容整形の世界に触れながら、一人の女の生涯を追っていく物語」。その中で、「人々の心の闇や美しさのあり方を描いている」といった作品になっております。

2013年に同名で映画化され、同年11月には文庫本の発行部数も100万部を突破しています。

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あらすじ

瀬戸内海に面した人口4万の古い田舎町で高級フレンチレストラン「オンディーヌ」を営む町一番の美女・未帆。彼女は店を経営しながらある男を待っていた。奇形的な醜さで生まれ、学校の級友はおろか実の母親にすら罵られながら育った女・和子。この和子こそが現在の未帆であった。周囲から疎まれる学生生活を送っていた和子だったが、高校で幼き日の淡い恋心を抱いた相手との再会を果たす。しかし和子の男への歪んだ思いが、ある事件を引き起こしてしまう。その常軌を逸した犯行に、町の人々は和子を「モンスター」と呼び忌み嫌う。親からは勘当される形で東京に出た和子を待っていたのは、それまでと同様、短大や職場で遭う差別された生活だった。それ故、美容整形にはまり、性風俗業に従事しながら、幾度にもわたる整形手術を繰り返していく。顔を変え、名前を変え、年齢を変え、別人の絶世の美女となり、新しい人生を手にした和子だったが、その胸のうちにはかつての初恋の男への変わらぬ思いがあった…

ブスと美人では社会的な生きやすさに大きな違いがある

私たちはこの言葉を聞いて、否定することができるでしょうか?

いや、ほとんどの人は否定できない。

一年生の時、習字の時間に男の子が誤って私の鞄に墨をつけたことがあった。私が思い切って「洗ってほしい」と言うと、彼は拒否した。私が強く言うと「ブスのくせに!」と吐き捨てるように言った。私はそれ以上抗議しなかった ― いや、できなかったのだ。

小学生の頃、私もこんな場面に出会ったことがあります。

小学生というのは気軽に「ブス」と口にする。段々と成長するに連れて口にするのは良くないと理解していく。

「君たちの中でも、新しい女友達に出会った瞬間、自分がこの人に勝ってるか負けてるかを、考えるだろう」

女性達は、いやーっと悲鳴を上げながら笑った。「そんなことないですぅ!」と口々に言ったが、その過剰な反応が玉井の言葉を肯定していた。

私は私で、彼女たちの反応にショックを受けていた。周囲の女性たちがいつも自分の顔を同性と比較してどちらが上か判定していたとは知らなかった。私のように最初から最下位に位置する者には気付かないことだったのだ。

賛否両論はあるだろうが、「美」というものが強い評価軸であり、メディアも日々「美」を訴求しています。

小学生の頃から私たちは、「美」という評価軸で人との優劣を判断しているのかもしれない。私自身は否定したい気持ちがあるが、絶対にないとは言えない、というよりもはや無意識レベルに誰しも刷り込まれているのではないかと思ってしまう。

私は男であるが、これまでの人生において、美しい女性に対して過度に優しくしていたことが「ない」とは言えない。ほとんどの人がそうだろう。

プライベートな面だけでなく、仕事の面でも美は強い武器となる。

医師の就活ではそこまで感じることはないかもしれないが、普通の就活においては明らかに美人が内定を貰える確率が高い。

「美容整形に保険が効かないのはおかしい」

誰かがこのように言ったら、どう思うでしょうか?

直感的には、「効かなくて当たり前だ」と思う人が大半のように思います。私もそうです。

一方で、美しく生まれた女性はそれだけで得な人生を歩むことができる・・・これは真ではないでしょうか?

だとすると、答えは同様でしょうか?

同じ女に生まれて、顔の違いがこれほど人生を変えるのかと思うと、暗い怒りが生まれた。美人は大学時代は男性にもてて楽しい青春時代を送り、就職試験では優遇されていい会社に入り、おそらく年収の高い男性と結婚できる可能性も高いのだろう、美しく生まれただけで、恵まれた人生が約束されているのだ。

学校生活、恋愛、就職、結婚・・・何においても美は有利である。一方で、容姿が醜ければ全てが茨の道となる。このギャップを埋める為には、とてつもない努力をするか、それとも大金をかけて整形をするかだ。(もちろん稼ぐ為にとてつもない努力が必要になるが・・・)

美容整形によって周りの反応は目まぐるしく変化していく・・・

主人公の和子は24歳の時に初めて美容整形の施術を受ける。それは二重の埋没法であった。

作中の中で、医師と和子とのやり取りでこんなものがあります。

「当院では、税込みで八万四千円になります。」

「そんなに安いのですか」

私はひどく共感した。一般的に言えば8万円とは非常に高価と言えるだろう。しかし、彼女からしてみれば20年近くずっと悩んできた一重瞼が解決するのです。「20年」とは途方もない時間だ。

施術後に和子が涙を流すシーンがあるが、私は美容医療の素晴らしさを感じずにはいられなかった。

二重の埋没法を手始めに、和子は目頭切開、鼻の整形と次々と新しい施術を受けていく。

それに伴い周りの反応は面白いように変化していく。

出てくる男性は皆彼女に優しく接するようになる。

メラビアンの法則であったり、ハローエフェクトと呼ばれるものがあり、要するに「人は魅力的な容姿の人を見ると、知能が高く、望ましい性格で、立派な人である」と無意識に思い込んでしまう性質を持っています。(メディアの操作ももちろんあるが、芸能人に対して良いイメージを持つのはこの辺りも大きく関係している。)

これまでは正当な主張をしていても煙たがられていたのに、整形を繰り返した後には正当であるないに関わらず、和子にとって有利に物事が動く。

まるで自分がその体験を追体験できるかのような、リアリティのある描写が多く、小説の中に没入させられる。

私には、ある種最も効果的な様々な病気の予防は「美容医療」の可能性があるのではないか、と思わされる。

なぜなら、多様な病気のトリガーとなるのがストレスだからだ。誰しも優しくされた方がストレスは感じにくい。

また現代においては女優やモデルであっても、美容整形を全く受けていないというのはマイノリティであり、ナチュラルであることに意義はあるのかと考えてしまう。

もしかすると、ナチュラルというのは戦争に防具を付けずに参戦するようなものかもしれない・・・

美容整形は女性を幸せにするのだろうか?

この問いに対して、あなたはどう答えるだろうか?

私は考え込んでしまった。

自分の顔やスタイルについて、どこも好きな部分がなかったとして、二重手術により自分の顔の一部分だけでも満足できるようになって、鏡を見るのが楽しくなる・・・これは幸せなことだろう。

和子は「ブランド物を大切に扱う人の気持ちがわかった」と言い、自分の目を愛しく思うようになった。

これだけで少し幸せになれる。

この顔は持って生まれたものではない。すべて自分の力で手に入れたものだ。それだけに、より価値がある。何の努力もなしに手に入れたものなんかじゃない。死ぬほどの苦しみの末に手に入れたものだ。

和子が骨切りの手術を受け、そのギプス等を取った際に、ボロボロと涙を流すシーンがあります。そこでの美容外科医とのやり取りは、心を打つものがある。美容外科医という仕事がいかに人の役に立つ、意義の大きなものなのかを痛感させられる、そんなシーンです。

医学部においては、美容医療に関する教育は一切受けていないと言っても過言ではないと思う。私としては美容医療の内容について学ばないことは良いかもしれないが、美容医療に対する向き合い方、意義を学ぶことは重要かと強く思う。

なぜなら、与える影響力が非常に大きいから、そして社会的意義が大きいからである。

ここまでの話だと、どうやら美容整形は女性を幸せにしそうだ。

だが、この「モンスター」を最後まで読む頃には、「美容整形は女性を幸せにするのだろうか?」という問いが生まれてくるのではないかと思う。

まとめ

美容医療というのは、現在、さらには今後「哲学的な問い」を持ったテーマとなっていくだろう。

整形は良いことなのか?自然にあるべきなのか?・・・答えは人それぞれであり、一元的な答えが出ないからこそ哲学なのだろうと思う。一方で、このような美に対して深く考えるということは、美容医療に携わる人は時々立ち返るべき部分ではないでしょうか。

「人の立場になってみる」というのは非常に難しい。だが、この書籍を読むことで、悩みを持つ女性に憑依して、その人の立場になってみることができる、いや少しでも近づくことはできるのではないかと思います。そして、これは美容医療を志す人にとっては重要な視点ではなかろうかと思う。

次のコラムでは、生まれた頃から「美人」な女性の憂いを描いたような作品があれば、是非読んでここで紹介したい。

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