「このまま医師として過ごしていいのか・・・他にできることはないのか?」
「医学部卒業しても医師になりたくない・・・でも他に選択肢ってあるのだろうか?」
「非効率・非合理な医療業界ではなく、もっと自分を活かせる場があるのではないか?」
こんなお悩みを抱えてはいないだろうか??
心の底からよく分かる。
なぜなら、この記事の執筆者である私も同じ気持ちを抱いたことがあるからだ。
さらに言えば、抱いただけではなく、実際に他業界へと転職をしたからだ。
医師から、外資系企業(コンサル)へと転職を経験した私だからこそ、このトピックについて誰よりもリアルに記載することができると考えている。(私のプロフィールは以下)
医師兼会社経営
地方国立医学部⇒初期研修⇒後期研修⇒外資系戦略コンサルティングファーム勤務⇒起業
それでは、諸君のお悩みを解決すべく、早速解説を進めていこう。
医師から他業種への転職はそもそも可能なのか?
最初に生まれた疑問は、「そもそも他の業種に転職できるのか?」だと思うが、結論としては、「全然可能である」
また、業種に関してもどの業種でも可能である。
年齢等の制約はあるにせよ、基本的に可能という認識で問題ない。
「特殊な業界で、一般常識と離れてしまっているが大丈夫か?」
というような疑問も次に出てくるかもしれないが、「一般常識を身に付ければほとんど問題ない」と言える。
ということで、基本的にどんな業種・職でも転職自体は可能ではあるが、それはあくまで給与やある種社会的地位等が下がっても良い場合である。
なので、次に現実的な転職先をそれぞれ説明していく。
転職可能性のある業種・職
医師免許を「直接」活かす場合
臨床医以外
【研究者】
これはイメージが付きやすいと思う。
臨床医ではなく、研究者として働く基礎医学の先生を見てきたはずだ。
研究者として、医学的な問題や治療法の開発に取り組むことができる。
山中教授は、整形外科臨床医としては、苦難が多かったが、研究医として花開いた素晴らしい一例だ。
是非臨床医が辛く、キャリアチェンジを考えている方は、以下の動画を見て見て欲しい。
【健診医】
健康状態や病気の早期発見を目的として、いわゆる「健康診断」を行う医師のこと。
働く場所としては、一般的な病院やクリニックのほか、健康診断専門の施設に勤務する。
健診医は、患者の健康状態を総合的に評価し、必要に応じて検査や治療、または生活習慣の改善などのアドバイスを行う。
【自由診療(美容外科医・皮膚科医)※】
※厳密には他業種ではないが、病院内に診療科としてはなく、勤務医の先生方にはあまり馴染がない為記載している
研修医修了後や、後期研修医の途中、専門医取得後など様々なタイミングで美容への転職をする人がいる。
病院以外での勤務
【産業医】
産業医とは、企業に勤める社員の健康管理を行う医師。
労働者の健康状態を維持し、労働条件の改善や予防策の実施を通じて労働災害や健康被害を防止することが役割。
主な業務としては、
・健康診断の実施や健康相談の受付
・職場の衛生管理や環境改善の提言
・職場内のストレスやパワーハラスメント等のメンタルヘルスの対応
その他業務として、
・労働災害や職業病に関する調査や報告
・労働災害や健康被害に遭った労働者の治療やリハビリテーションの支援
【保険会社の社医】
保険会社の社医とは、保険会社の従業員や加入者の健康管理や医療相談を行う医師。
主な業務としては、
・従業員の健康管理
・健康診断の実施
・保険金支払いに関する医療判断
・労働災害の医療処置や相談
保険会社の社医になるための資格や免許は医師免許以外には特にないが、保険に関する知識を持っていれば、医療判断や保険金の支払いに関する判断において役立つ。
具体的な採用条件や選考プロセスは保険会社によって異なるため、就職活動の際には各社の情報を収集し、応募に必要な条件や求められるスキルや経験を確認する必要がある。
【矯正医官】
矯正医官とは、受刑者や被収容者の健康管理や医療処置を行う医師。
刑務所や少年院、拘置所などの矯正施設で働くことが多い。
矯正医官になるには、医師免許を取得後、所定の研修を修了する必要がある。
矯正医官の研修は、法務省や厚生労働省が指定する矯正医療研修施設で行われ、研修期間は1年間程度で、矯正医療の基本的な知識や技術、法律などについて学ぶことになる。
矯正医官には、特に専門の科である必要はないが、矯正施設によっては必要な診療科が異なるため、各求人情報を確認する必要がある。
矯正医官の求人は少なく、競争率が高くなるので、研修期間中に積極的に求人情報を収集し、応募に必要な条件や求められるスキルや経験を確認することが重要となる。
若手、つまり医師5年目程度までの場合は推奨できない。
医師免許を直接は活かさない場合
【コンサル】
こちらは私自身が実際に転職した業界なので、最もリアルな情報を提供できる。
コンサルの中で医師の数は非常に少ないが、医師から他業界への転職という観点では、コンサル業界が最も多いのではないかと推察している。
まず、コンサルティング業界とは、戦略系、総合系、その他に大きく分類できる。
医師からの転職という観点では、戦略系、総合系、その他の中の医療系の3つが主な対象となり得ると思う。
上記のどれなのかにより業務内容は変わってくるが、大まかに言えば「大企業(例えばユニクロのような)の経営課題を解決する為に、様々な検討・リサーチを実施し、解決方法を提言する」というのが業務内容になる。
基本的には、35歳以下であれば転職できる可能性があると思っていただいて問題ないかと思う。
【医療系ベンチャー企業】
医療系、ビジネス用語ではヘルスケアということが多いが、この領域は近年注目度も上がっており、それに伴いベンチャー企業が増えている。
例えば、オンライン診療ツール等を提供しているMICIN、メドレーであったり、様々なヘルスケアデータを所持しているJMDCなど多くの企業がいる。
こういった企業においては、医師としての視点・知見がサービスの開発・浸透に役に立つことが多く、人材を募集しているケースがある。
【厚生労働省の医系技官】
国家公務員のうち医師や歯科医の免許を持つ行政官。
採用しているのは、厚生労働省。通常の官僚とは別の採用体系となっているのが特徴。
勤務場所としては、厚労省の本省や検疫所など関連機関に加え、内閣官房や文部科学省、国立病院などで勤務する技官もいる。世界保健機関(WHO)など国際機関に派遣されるケースもある。
業務内容としては、政策の立案から実施の過程に関与する。具体的には、資料作成、関係者と意見交換していくといった業務を行う。
【製薬会社】
医師の知識や経験を活かし、製薬会社での研究開発、製品の開発・販売、医療従事者への情報提供などの業務に携わることが可能。
【投資銀行】
医療分野の企業の財務分析や投資判断において、多少知見を活かせる可能性はある。
しかし、高度な思考力、ファイナンス・アカウンティングに関する高度な知識と、ハイレベルなExcelスキルが要求される業種であり、転職難易度は非常に高いと言える。
私の知る限りでは、医師からの転職はほとんどいない。
医学部卒業後、新卒として入社したという話は聞いたことがある。
【教育(予備校講師】
大学入試において難関である医学部を卒業している、という実績と、受験勉強の知見を活かして、予備校講師や教育関係に進出する医師は一部存在している。
その他(非常に稀)
【医療機器メーカー】
医療機器の開発、販売、顧客へのサポートなどの業務に携わることができる。
【メディア・出版社】
医療分野に特化したメディアや出版社で、ライターや編集者、コンテンツプロデューサーなどに付ける可能性がある。医師の知識や経験を活かし、医療に関する情報の発信や情報収集なども可能。
【起業】
医師に限らず誰しも起業は可能。
医師に関して言えば、ヘルスケア領域において起業している方が一定数いる。
【エンジニア】
医学部生の頃から、プログラミングが好きでずっとやっていて、新卒でエンジニアになった方や、病理領域のAIで起業された方がいる。
また医師をされており、そこからGoogleのエンジニアになったLillianさんという方もいる。
転職の際の話をnoteで出されている。
私も読んだが、面白過ぎて、一瞬で読めてしまった。
【漫画家】
ブラックジャックや、鉄腕アトムで有名な手塚治先生。医学部を卒業し、漫画家となっている。
なんと医師国家試験についてはジャングル大帝や鉄腕アトムなど連載の執筆をしながら合格している。
【宇宙飛行士】
かなりレアなケースだが、以下3名が実際に医師から宇宙飛行士となっている。
・古川 聡さん 東京大学医学部卒業
JAXA紹介ページ https://humans-in-space.jaxa.jp/space-job/astronaut/furukawa-satoshi/
・向井 千秋 慶應義塾大学医学部卒業
JAXA紹介ページ https://humans-in-space.jaxa.jp/space-job/astronaut/mukai-chiaki/
・金井 宣茂 防衛医科大学卒業
JAXA紹介ページ https://humans-in-space.jaxa.jp/space-job/astronaut/kanai-norishige/
医師を辞めたくなるよくある理由
続ける理由や、辞める理由というのは、お金・時間・やりがいの3つの要因が絡みあって決まることが多い。ほとんどの人は無意識レベルではあるが、この3つの要素を検討しているはずである。
その上で、一つのデータとして以下のようなものがある。
これを少し整理しなおして、他にもよくある理由を追記すると以下のような形になる。
<お金>
・給与が低い
・将来的な給与の伸びが少ない
<時間>
・勤務時間が長すぎる≒仕事量が多すぎる
・オンコール、当直が辛い
<やりがい>
・職場の人間関係が悪い
・精神的な負担が大きい(命に関わっているプレッシャー等)
・仕事の内容が自分に合わない
・医療制度・システムの非効率性へのモヤモヤ感
・(近年)コロナ対応、及びその周辺による影響が辛い
基本的には、「辞めたいなぁ・・・」と感じる場合、上記の要因が複数絡んでいることが多いはずだ。
他業種への転職で注意すべき点
実際にコンサル業界という他業種へと転職した経験のある私が、医師が他業種へ転職する際に理解しておかないと辛い思いをするであろう点をまとめておく。
医師がかなり恵まれているということを理解しておく
先程、辞めたくなる理由として、お金・時間・やりがいという3要素があったが、そこに抜けている要素として社会的地位がある。
異論はあるかとは思うが、社会人1年目の研修医であっても、患者さんからは「先生」として見られ、医師以外のコメディカルからも一番下という扱いは受けにくかったはずだ。
一方で、他の業種に就く場合、本当に「一番下」となり、患者ではなく「顧客・クライアント」商売となる
その為、語弊はあるかもしれないが「自分<顧客」という構図となる。
これは結構辛い。
他には、年収1,000万を保って、時間・やりがいを保てる職業はほとんどない、と理解した方が良い。
基本的には年収1,000万を他の業種で達成しようとすると、時間 or やりがいを大きく損なうケースが多い。
一方で、コンサル、投資銀行、医療系ベンチャー等で、続けていくことができれば医師の給与を大幅に上回るということも可能という事実はある。
転職エージェントの活用方法
「よし、転職しよう」
と思った際に、「とりあえず転職エージェントに相談してみるか」と思うかもしれない。(私もそうだった)
しかし、これはオススメできない。転職エージェントもビジネスとしてやっているので、あなたの為に十分な情報提供をせずに、オススメの転職先を提示してくる可能性があるからだ。
なので、基本的にはまず自分自身で、インターネットや知人等のツテを用いて知識武装していくことをオススメする。
他業種への転職で必要なこと
他業種へ転職する際には、医師の就職活動とは違ったポイントがあるので、解説させていただく。
業界・企業の情報収集
これはマッチング先の病院の情報収集と基本的には同じではあるが、知識が全くない業界・企業について調べることになるので、難易度が大きく上がる。
基本的にはまずインターネットで探すことになると思うが、情報が玉石混合なので、一定の知識がなければ誤った情報に影響を受けかねない。
そこで時間もないし、何だかよく分からないし・・・「よし、とりあえず転職エージェントに電話だ!」というのは辞めた方が良い。
まずは自身のツテを辿り、その業界、周辺企業について詳しく信頼できる人を探し、色々と聞いてみることをオススメする。
私としては、焦らずに数カ月単位でしっかりと情報収集をしていくことを推奨する。
書類準備・面接対策(+筆記試験対策)
行きたい業界・企業が決まれば、その後のフローとしては、書類準備⇒(筆記試験対策)⇒面接対策となる。
ここは業界、企業によって異なるので一概には言えない。
一例として、コンサル業界であれば以下のような形式となる。
・書類提出(履歴書+職務経歴書)
・筆記試験受験
・面接3~7回
基本的に「自分<顧客」という構図になるので、面接においてコミュニケーション力が特に見られることになるので、しっかりと対策することが重要である。
まとめ
いかがだっただろうか?
覚悟があれば医師と全く関係のない仕事もできるし、臨床医が本当に辛いのであれば別の選択肢もある。
私は臨床医として、その道を極めていく人を心の底から尊敬している。一方で、それ以外の道があっても全然良いと思っている。
キャリアに悩んで、うつになってしまう必要なんてないし、何より悩み過ぎる時間がもったいない。
医学部生や医師の方で、キャリアについて「本気で」悩んでいるという人は、以下のLINE@から連絡いただければ可能な範囲で相談に乗らせていただこうと思っている。
良いキャリアを築けるように、しっかりと自分自身と向き合いつつ情報収集を進めていこう。
医師兼会社経営
地方国立医学部⇒初期研修⇒後期研修⇒外資系戦略コンサルティングファーム勤務⇒起業
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