- 「美容外科医は増えており、今後レッドオーシャン(競争が激しい市場)になるのではないか
- 美容外科医の給料は下がっていくのではないか
- 韓国では安く美容医療を受けられるので、日本の美容医療は負けてしまうのではないか
- 美容医療で開業するのは今後厳しいのではないか
美容外科医になろうと考えてはいるが、美容外科医の将来について考えると不安で不安で、中途覚醒してしまうドクターの卵の諸君、アニョハセヨ。
上記のような悩みを抱えていると思うが、本当にそれは正しい推察と言えるだろうか?
客観的な分析によって導き出された推察だろうか?
医療の勉強に全身全霊を注いできたので、経済についてよく分からないのは至極当たり前のことである。
そこで、そんな諸君等の為に、月に代わって
現役医師かつ、元外資戦略コンサルタントである著者が、複数の美容外科医や現役の外資戦略コンサルタント達と熱い討議を重ねた上で、この記事をお届けするッ!
【略歴】
地方国立医学部卒→研修医→後期研修→外資戦略コンサルティングファーム→起業
地方⇆東京の両方を経験、かつ医師⇆サラリーマンの両方を経験
医師向けにキャリアやビジネスに関するお役立ち情報を月に代わってお届けする
結論|美容外科医の将来は5~7年程度の未来においては、安泰である
早速結論からお伝えしてしまうが、「5~7年程度の未来においては安泰と言える」。
こちらの根拠としては、美容外科に対する需要>供給という関係が5~7年程度の未来では持続すると考えられるからだ。
ここで、
5~7年以降はどうなの?
と思うかもしれないが、基本的にはそれ以降も安泰だろう。
だが、現在はVUCA※の時代と呼ばれ、先行きが分からないのが普通である。そのような状況下で、10年後安泰と言える仕事などほとんどないだろう。ただ普通に考えると、10年後美容外科医の給与が激減したりといったことが起こるのであれば、他の職業はさらに大きなダメージを受けていると考えられるだろう。
※VUCAとは
一言でいうと「先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態」を意味します。元々は1990年代後半に軍事用語として発生した言葉ですが、2010年代に入ると、昨今の変化が激しく先行き不透明な社会情勢を指して、ビジネス界においても急速に使われるようになりました。VUCAは、こちらの4つの単語の頭文字をとった造語です。V(Volatility:変動性)、U(Uncertainty:不確実性)、C(Complexity:複雑性)A(Ambiguity:曖昧性)。
では、なぜこのような結論になるのか、詳細を経営戦略論的な観点から解説していく。
前提
ここで解説をするにあたり、読者の諸君と認識の擦り合わせを実施しておきたい。
「競争が激しくなる⇒将来が安泰ではない」というのは、論理の飛躍がある。
実際には、「競争が激しくなる⇒給料が低下する、解雇のリスクが上がる、倒産する可能性が上がる⇒将来が安泰ではない」という流れで捉えるべきである。
また、「競争の激しさ」とは、どこからが競争が激しいのか不明確なので、その辺りは「供給面」についての項目でお伝えしていく。
需要面|年々増加している
美容医療に対する需要は、読者の諸君の体感としても伸びているのは感じているだろう。特に都心部に在住している人は、広告の多さなどを見ていれば感じるはずだ。
需要面に関してはある程度自明とは言え、少しデータも参照してみよう。
縦軸の数値がないこと、美容外科全体ではなく医療脱毛であることには留意が必要だが、右肩上がりで伸びている。
少なくとも5~7年程度の未来で言えば、美容医療全体としても伸びていくと言えそうだろう。
供給面|新規参入する数が限られている
次に供給面から、美容外科市場の競争の激しさについて検討していく。
ある業界の「競争の激しさ」を分析する上で、経営戦略論における有用なフレームワークの一つとしてポーターの5forces分析がある。今回で言えば、「美容外科市場はどれくらい競争が激しいのか?」という問いに対する解を出す上で有用なツールとなる。
上記の5つの力(forces)を検討することで、その業界の厳しさが分かるというわけだ。
3,4の力に関しては、美容医療業界だけでなく医療業界全体として弱い。(つまり、競争が激しくない)
5に関しては、他の業界と比較して、医療は代替しにくいのは容易に想像できる。
そして、残りの「1.既存企業間の競争の激しさ」と「2.新規参入の脅威」という2点が特にポイントとなる。
結論として、この2つの力も弱いと考えているので、その根拠を続けて解説していく。
医師免許によって守られている
「1.既存企業間の競争の激しさ」と「2.新規参入の脅威」の2つにおける勘所となるのは、クリニックというのは「医師」が必要という点にある。
どういうことか?
例えば、飲食店であれば「誰でも」開業することが可能である。つまり日本の生産年齢人口が6000万人程度であるので、極論6000万人が競合となり得るわけだ。
国内の医師数は限られている
一方で、医師の数はご存じだろうか?
医師数は339,623人(令和2年)
厚生労働省|令和2(2020)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況
厚生労働省によれば、医師の数は約30万人となっている。つまり、現状では最大でも競争相手は30万人ということだ。
参考までに、美容師・理容師の数は約75万人である。
次に毎年何人が医師になるのかを考えてみよう。次のような数式で簡単に概算できるかと思う。
【1年に増える医師数】=【医学部の数】×【1校あたりの1学年の人数】
医学部の数は、
81校
文部科学省|医学部を置く大学一覧(令和元年度)
1校あたりの1学年の人数については、私も医師なのでよく分かる。
多少の幅はあるかもしれないが、大体100人程度だろう。
そうすると、1年に増える医師数は81校×100人≒8,000人となる。
つまり、何が言いたいかというと、現状医師の数は毎年8,000人ずつしか増えることがなく、劇的に新規参入が増えることはないということである。
韓国の美容外科医は参入できない
美容外科の話で必ず出てくるのは韓国の美容外科の話だ。
その際に、まずは韓国の美容外科医が日本で施術をするには、「日本の」医師免許が必要となるので、単純に参入できる韓国の美容外科医はほとんどいない。
一般的なビジネスであれば、海外から日本への参入というのは当然あり得るが。
次に多くの美容外科医、及び志望者が気にするであろうことは、
今はコロナの影響もあって、なかなか渡韓できないけれど、今後韓国に施術を受けに行くようになってしまうのでは?
ということだろう。
韓国での施術は日本と比較すると安い。なので、確かに一定数は韓国へ出ていくかもしれないが、お金以外に時間的コストもかかってくるので、全体としての影響として見た場合には、そこまで大きくはないのではなかろうか。
例えば二重整形の一例で言うと、以下のような形となっている。
ここでは、コストとして交通費・宿泊費が含まれているが、それ以外の潜在的なコスト、例えば言語的な壁、トラブルが起きた際の宿泊費用等も踏まえると一概に安いとは言い切れない。
「二重以外も韓国の美容整形の相場が気になる!」という諸君は、こちらの記事を参照いただくと良いだろう。共立美容外科さんが、日本の相場と比較して解説してくれている。
(参考)韓国の美容整形の値段の相場を日本と比較しながら解説!
美容外科医の数は増加傾向
最後に補足として、近年の大手美容外科の医師入職者数を見ておこう。
提言|競争優位性を築く努力をし続けることが重要
どれだけ業界・市場の環境が変化したとしても、その業界・市場の中で競合(ライバル)よりも、優れた部分があれば心配する必要はない。
基本的に美容業界の将来性は安泰ではあるが、その中で競争優位性(ライバルに対し優れている部分)を構築することで、より安泰な状態にできる。
技術力、集客力を高める研鑽を怠らないことが、当たり前ではあるが重要なことである。
まとめ
いかがだっただろうか?
最後に伝えておきたいのは、未来のことは誰にも正確に予測することはできない。
iPhoneの登場、コロナパンデミック、そして今後メタバースの発展・・・たった一つの事象によって、全ての前提が変化する可能性を秘めている。
しかし、仮説を立てることで、一定の見通しを持った上で戦うことができる。
医師兼会社経営
地方国立医学部⇒初期研修⇒後期研修⇒外資系戦略コンサルティングファーム勤務⇒起業
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